100年後に豊かな自然と文化を引き継ぐ。その第一歩をつくる「三ツ矢青空たすき」。

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2024年に140周年を迎える炭酸飲料「三ツ矢サイダー」。このブランドの源泉である「日本の豊かな自然や文化」を未来につなげていきたいという思いから、「三ツ矢青空たすき」の体験プログラム提供を2023年7月に開始しました。「三ツ矢サイダー」を手がける『アサヒ飲料』のマーケティング企画部プロデューサーで、本事業の立ち上げから関わっている宮本史帆ふみほさんに話を伺いました。

目次

自然とともにある飲料メーカーができること。

――「三ツ矢サイダー」をこれまでに多くの人に届けてきた『アサヒ飲料』は、飲料の提供と社会課題の解決を掛け合わせて「三ツ矢青空たすき」の事業を始めたとのことですが、そこにはどのような背景や思いがありましたか。

宮本史帆さん(以下、宮本) 主原料である水に強いこだわりがある「三ツ矢サイダー」は、その豊かな水を生み出す自然の恩恵を受けつつ、世代を問わず飲まれてきました。そこで、この日本の自然とお客様へ恩返しをしたく始まった事業です。約400人にアンケートで「三ツ矢サイダー」との思い出を伺ったところ、「田舎のおじいさん、おばあさんの家で飲んだ」、「海遊びや昆虫探しなど自然の中で過ごして、みんなで飲んだ」といった思い出が多く挙がりました。

約140年の歴史を持つ「三ツ矢サイダー」。

今では都市生活者が増えてきて、そのような機会が失われつつあります。自然や自然と結び付きが強い日本古来の文化を伝えていくことで持続可能な暮らしができ、その積み重ねが100年後にも豊かな自然を残していくことにもつながる。自然との都市生活者の距離を近づけて、私たちが自然の恩恵を受けて生きていることを感じられるようにと、「三ツ矢青空たすき」のプログラムを始めることにしました。

『アサヒ飲料』マーケティング企画部プロデューサーの宮本史帆さん。

“語り部”を通じて自然を知り、自分と向き合う。

――プログラムはどのような内容でしょうか。

宮本 立ち上げの背景にある思いをそのままお伝えするだけでは、なかなか多くの人には振り向いてもらえないと考えて、「自然を親しむ」「食を見つめる」「ものづくり」の3つをテーマにした体験プログラムを用意して、「楽しそうだから参加したい」と思ってもらえるような内容にしました。

――参加のハードルが下がりそうですね。他に特徴はありますか。

宮本 体験を通じて思いを語ってもらう“語り部”が全プログラムにいることも特徴です。地域に根ざして、人と人の関係づくりも進めながら活動をしている方に語り部をお願いして、福岡県糸島市を舞台にプログラムを一緒につくっています。

「海底から湧き出る水で塩づくり!今日だけの特別な塩づくりを体験しよう」プログラムの様子。

――糸島市を選ばれたのは、どんな理由があったのでしょうか。

宮本 こういう体験に価値を感じてくださる方は、都市生活者がメインになってくると思うのですが、糸島市へは福岡空港からもアクセスが良くて電車で1時間ほどのところにあるのに、一つのまちに山も森も里山も、川も海もあって、自然の循環を感じられる魅力的な場所であることが理由のひとつです。

糸島の風景。里山や海が身近にある。

もう一つの理由は、語り部となりうる魅力的な活動をされている方が多く存在していること。ここでは移住者も多く、もともと都市部で生活していたけれど転機が訪れて、自身の人生を見つめ直して移住をしているので、語り部の方の生き様や思いが体験にも表れています。

例えば、ひょうたんでランプをつくる体験プログラムがあり、それだけ聞くと「なぜひょうたんを使うの?」「なぜ糸島なの?」という疑問を持たれるかもしれません。ですが、糸島でも唯一自家栽培で、しかも農薬に頼らず栽培した、自然と共生したひょうたんを実際に手にして、その畑の棚は自然に還る竹でつくられていて、一つひとつ語り部が手間暇かけて乾燥させていることを知ると、ただのひょうたんではなくなってくるんです。

ピンやきりで穴をあけてつくるひょうたんランプ。

ものの価値やものに対する向き合い方が体験の中で変わっていく。つくり手に対するリスペクトが生まれて、顔の見える生産者の食材を選んだり、長く使える日用品を選んだりと都市部の人の消費行動にも変化があれば100年後の未来が明るくなっていく――。微力ながら、その変わるきっかけとなるような体験を提供できたらと思っています。

有機的に変化しながら、ワクワクする100年後に向かっていく。

――いまある自然を100年後につないでいくために、“楽しさ”を入り口にして自身の暮らしを見直すという方法に共感を覚えました。

宮本 このような自然にまつわる体験は親子向けのものが充実していますが、「三ツ矢青空たすき」では、あえて大人向けのプログラムを数多く用意しています。今の生活を見直す、買い物時の選択肢を変えるなど、世の中をよりよくするために自ら行動を起こすことを大人がやらないと、子どもたちの時代に豊かな自然を引き継げないのです。大人にとって実感を持って学び直す機会が意外と少ないので、大人にこそこのような体験を届けていきたいです。

さらにこのプログラムでは、参加者に語り部の方とたくさん交流していただきたいですし、体験のみならず一緒に何かできるような場もつくっていけたら。世代や考え方が異なる人と出会って、共に何かをしたり学んだりすることの楽しさ、関わり合うことの良さも見つけてくれる時間になればさらにうれしいですね。

古民家での竹箸づくり体験プログラム。自然と交流が生まれている。

――「三ツ矢青空たすき」の今後については、どのように考えていますか。

宮本 現在は体験サービスの提供からスタートして、場所も糸島市が中心ですが、この先100年後の未来に日本の豊かな自然や文化をつないでいくために行動している人たちとどんどんつながって、共創しながら行動を起こしていきたいです。5年後、10年後の目標を立ててそれに向かって行動していくというよりは、植物のように有機的に変化していって、今できるアクションをどんどんしたいですね。100年後にどうありたいのかを判断軸にして、みんなでワクワクする方向に向かっていけたらと思います。

宮本 史帆(みやもと・ふみほ)
アサヒ飲料株式会社 マーケティング本部 マーケティング企画部ブランド活用推進グループ プロデューサー
1999年カルピス株式会社入社。人事・広報などを経験。2016年よりアサヒ飲料株式会社所属。調達、マーケティング部門で人材育成・リサーチ業務等を経て2021年より現部署。三ツ矢青空たすきの事業企画時から携わり、現在同事業統括担当。

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photographs by Takeshi Konishi, Asahi Soft Drinks Co., Ltd.
text by Mari Kubota

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