静岡市は児童相談所の業務負荷を軽減する目的でAIを導入します。システムを構築し、2024年4月より運用を開始します。システムの導入を支援するNECが2023年10月13日に発表しました。
児童相談所では近年、児童虐待の相談対応件数が増加。職員の業務負荷が増しつつあります。一方、定年退職や人事異動などによってベテラン職員は減少。経験の浅い職員へのノウハウ継承が課題となっています。さらに面談記録や会議の文字起こしといった単純作業が職員の負担となっており、業務を効率化する取り組みが求められていました。
そこで静岡市は、相談時のノウハウを学習したAIが、過去の類似事例を呼び出すシステムを構築します。
具体的には、児童相談所内のリスクアセスメント(職場などにある危険性、有害性の特定やリスクの見積もり、問題解決の優先度などを定める手順のこと)のデータと、それに紐づくベテラン職員の知見・ノウハウをAIが学習。これにより、通告内容から過去の類似事例やベテラン職員のアドバイスなどを引き出せるようにします。児童虐待対応の通告時や調査時、処遇時の各フェーズに応じて有益な情報を呼び出せるのがメリットです。“ホワイトボックス型AI”と呼ぶAIを装備することで、AIが提示した情報の選定根拠を示せるようにしているのも特徴です。
静岡市は本システムを活用することで、経験の浅い職員でもベテラン職員と同じ着想で行動できるような支援体制を整備し、組織全体の対応の質向上を目指すとしています。
さらに、面談記録や会議の文字起こしを自動化する音声認識AIも導入。児童相談で使われがちな専門用語を学習したAIを搭載し、音声の認識精度を高めているのが特徴です。これにより、職員の業務負荷を軽減し、コア業務である児童福祉業務に注力しやすくします。
なお、音声入力やタブレット端末のタッチ入力といったUIに対応。虐待の初動対応は48時間ルールに基づきスピード感が求められることから、システム操作の手間を最小限に抑えるような工夫も施します。
本システムを正式導入するにあたり、静岡市では2022年12月から2023年3月まで本システムを使った実証実験を実施。その結果、対応の質が約54%向上、業務時間が約33%削減するという効果を上げています。
NECは今後、静岡市での実績を活かし、全国の児童相談所への本システムの展開を目指します。電話による通告時の音声を文字化するなど、音声認識AIのさらなる機能強化も進めます。さらに、家庭児童相談室やその他の関係機関も含めてノウハウを共有することで、子どもの福祉全体の支援強化も目指す考えだということです。